図鑑の余白を楽しもう プチ生物研究家・谷本雄治
夏は図鑑の出番がふえる。掲載写真は白バックだったり背景をぼかしてあったりするから、主役の虫や草木が識別しやすい。二次元コードを読み取れば、自然を切り取った動画まで見られる。まさに、至れり尽くせりの時代である。
ところが現実の生き物は草むら
夏は図鑑の出番がふえる。掲載写真は白バックだったり背景をぼかしてあったりするから、主役の虫や草木が識別しやすい。二次元コードを読み取れば、自然を切り取った動画まで見られる。まさに、至れり尽くせりの時代である。
ところが現実の生き物は草むらにまぎれ、土や枯れ葉に溶け込んでいる。独立して存在することはなく、周囲の環境があってはじめて生きていられる。だから野外に出ると、図鑑とのギャップを感じることも多い。
観察の場で役立つのはにおいや手ざわり、気配などだ。むっとした草いきれは、言葉だけでは理解できない。チクっときたら、とげのある草だとわかる。生の自然は泥くさく、騒がしく、雑然としている。
身近な植物について話す機会があり、写真を見せながら解説した。その中にヤブガラシの花があった。ひとつずつの花はとても小さいが、まとまって咲くことで認識される。
咲き始めはオレンジ色で、花びらと雌しべ・雄しべを備えている。しかし、半日もすると雌しべだけになり、色はピンクに変わる。さらに時間がたつと再びオレンジ色になり、最後にはまたピンクになる。そうした生育段階の異なる花がひとかたまりになって咲いているから、見ていて飽きることがない。
ヤブガラシには2タイプあり、東日本では実が見られないと紹介されることも多い。だが、実際にはまれに見られる。
茎や葉、花の近くには真珠体という小さな水滴のようなものもある。「真珠」からはつるつるの表面を思い浮かべるが、ルーペで拡大すると毛が生えているのに気づく。その時の驚きは、どう例えればいいのだろう。
自然界には自分だけの発見がいくらでもある。それは農業も同じだろう。図鑑と実際の様子を見比べることで、正解はひとつではないと知るきっかけにもなる。
夏休み。子や孫と、そんな自然観察をしてみませんか。暑さ対策をばっちりしてね。
◇次回は9月11日付








