【イチゴの恩返し】漫画家・コラムニスト 辛酸なめ子
食糧難が来ると周りの人々に警告され、今年の2月までシェア菜園を借りていました。もしかしたら1年早かったかもしれない、と昨今の物価上昇やナフサ不足の広範囲への影響を見て思っています。昨年の秋冬、菜園ではカリフラワーやニンジン、大根などを育て
食糧難が来ると周りの人々に警告され、今年の2月までシェア菜園を借りていました。もしかしたら1年早かったかもしれない、と昨今の物価上昇やナフサ不足の広範囲への影響を見て思っています。昨年の秋冬、菜園ではカリフラワーやニンジン、大根などを育てていました。2月末までに更地にして返さなければならなかったのですが、イチゴだけが全く実る気配がなく……。抜いて処分するのも忍びないので、ベランダのプランターに移植することにしました。
それから1カ月、2カ月と経ってもイチゴの姿がなく、諦めかけていたところ春になって白い花が咲きました。5月には小さな実がなり、赤く色づきはじめたのを発見。いびつな形もかわいく思えてきます。ホームセンターで「よつぼし」の苗を買ったのが9月なので、8カ月近くかかって収穫となりました。イチゴには「マイペースで生きていいんだよ」と教えてもらったようです。シェア菜園は虫が結構いたので、前期のイチゴは残念ながらほとんど虫に食べられてしまったのですが、今回はベランダなので虫がつかないという利点がありました。
一度に1、2粒だけの収穫量の貴重なイチゴを食べてみました。酸味と甘味が控えめに共存。味が薄めなのは肥料不足でしょうか。素人なので果物の栽培は難しいです。ふと視線を感じたのでベランダの方を見ると、プランターのイチゴの葉っぱが見守っているようでした。「ありがとう」とお礼を言うと喜んでいるのが伝わってきます。野菜や果物を育てると、植物とコミュニケーションできる気がするのが不思議です。ベランダの環境に適応しながら、なんとか生き抜いたイチゴなので、生命力やタフさを分けてもらえそうです。大切に育てたイチゴは、食べると胸がいっぱいになって、不思議と1粒だけでも満足できます。日々のスイーツ代が節約できて健康にダイエットできるかもしれません。「イチゴの恩返し」、そんな感動のストーリーが浮かび、余韻に浸りました。
◇次回は7月3日付








