改正労災保険法 加入義務化を人と経営守る契機に
農業に「絶対に事故は起きない」はない――7月10日に改正労災保険法が成立した。労災保険の意義を改めて考えたい。
労災保険は、業務中や通勤中のけがや病気に対し、治療費や休業補償などを行う制度である。他産業では人を雇えば加入が義務付けられてい
農業に「絶対に事故は起きない」はない――7月10日に改正労災保険法が成立した。労災保険の意義を改めて考えたい。
労災保険は、業務中や通勤中のけがや病気に対し、治療費や休業補償などを行う制度である。他産業では人を雇えば加入が義務付けられているが、農業では個人経営体で常時雇用5人未満の場合は加入が任意とされてきた。今回の改正により、この特例は2031年度までに廃止され、労働者を1人でも雇う農業経営体は加入が義務となる。対象は約20万経営体に及ぶ。
「義務化」と言うと聞こえは悪いが、経営にとっては悪いことではない。本来事業主は労働基準法に基づく災害補償責任を負う。人を雇う以上、その命と生活を守る責任があるということだ。労災保険は、その責任を果たし、働く人と経営を支える制度でもある。
農業は全産業平均に比べ労働災害による死亡事故率が約13倍高い。一方、25年農林業センサスでは、農業経営体数は84万となり、10年間で約4割減少した。地域計画でも農地の約3割で将来の受け手が位置付けられておらず、経営を守る重要性は、地域農業を維持するうえで一層高まっている。特に人手に余裕のない小規模経営では、1人の事故が経営に与える影響が大きい。経営が止まれば、その影響は地域全体にも及びかねない。
安全対策の徹底は欠かせないが、事故をゼロにすることは難しい。だからこそ万が一への備えであり、事業主の責任を果たす労災保険への加入が重要である。
今回の法改正を単なる義務化ではなく、人と経営を守る契機と捉えてほしい。大切な人材と経営、そして地域農業の未来を守るため、義務化を待たず、一日も早い加入をお願いしたい。








