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選ばれし精鋭たち 小説家・瀧羽麻子

2026年10月23日

 この時期、青果店やスーパーで見かけると、必ず買ってしまうものがある。


 生落花生である。煎(い)ったものもおいしいけれど、掘りたてを茹(ゆ)でて食べられるのは秋だけだ。ぼやぼやしてはいられない。


 地面に落ちた花の下に実ができるのが、名前の所

 この時期、青果店やスーパーで見かけると、必ず買ってしまうものがある。


 生落花生である。煎(い)ったものもおいしいけれど、掘りたてを茹(ゆ)でて食べられるのは秋だけだ。ぼやぼやしてはいられない。


 地面に落ちた花の下に実ができるのが、名前の所以(ゆえん)だ。命名した人はセンスがある。軽やかな語感もいい。ピーナッツともいうし、てっきりナッツの一種かと思っていたら、マメ科の植物らしい。「ピー」は英語で豆のことだから、「ピーナッツ」=豆のようなナッツという意味になるが、正しくは、ナッツのような豆である。これはこれでかわいらしい響きだけれど、やはり落花生のほうが風情は感じられる。年輩の方が南京豆と呼ぶのもたまに聞く。和風、洋風、中華風、さまざまな名で親しまれているのは、世界各地で広く栽培されてきたためだろうか。


 国内では千葉県が一大産地で、調べてみると専門の研究機関まであり、なんと1600種もの種子を世界から集めて品種改良に取り組んでいるという。


 そこで生まれた品種のひとつが、「おおまさり」だ。味もサイズも勝っているので名づけられた。大きくなければおおまさりの名がすたるということで、収穫後には厳しい選別がなされる。選ばれし精鋭たちだけが店頭にたどり着くのだ。これは買い物カゴに入れずにはいられない。僅差ではじかれ涙をのんだ中まさりや小まさりもいるに違いない。彼らの無念にも思いをはせつつ、慎重に調理にのぞむ。


 水から茹で、火をとめてさらにしばし待つ。おおまさりに敬意を表し、時間も塩の分量もきっちりはかる。


 ほんのり湯気の立つ殻を割ると、ふっくらした大粒の実がみっしりと詰まっている。ほくほくの食感で甘みが強い。大勝を超えて、もはや圧勝である。ビールがとまらない。白ワインにも日本酒にもウイスキーにも合う。さすが世界中で愛食されているだけある。いろんな国で、いろんな調理法で、いろんなお酒とともに、今日も落花生は人々の舌を喜ばせていることだろう。


◇次回は11月27日付

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