【夏季特集企画】これからの夏の暑さに向き合う③ 猛暑の犯人は誰なのか

2026年08月14日
     
正のダイポールモード現象 (気象庁「インド洋に見られる海面水温の偏差パターンと日本の天候」を基に作成)
エルニーニョ・ラニーニャ現象とは(気象庁の資料を基に作成)
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 日本の夏の暑さの犯人は誰だろうか。


 一つは太平洋高気圧、もう一つは上空のチベット高気圧である。


 太平洋高気圧は「ハドレー循環」と呼ばれる大規模な大気循環によって生まれる。熱帯付近の高温で湿った空気は、雨を降らせながら上昇して乾燥する。そし

 日本の夏の暑さの犯人は誰だろうか。


 一つは太平洋高気圧、もう一つは上空のチベット高気圧である。


 太平洋高気圧は「ハドレー循環」と呼ばれる大規模な大気循環によって生まれる。熱帯付近の高温で湿った空気は、雨を降らせながら上昇して乾燥する。そして、この乾燥した空気は日本付近で下降する。湿った空気の上昇時は気温の低下幅が小さいのに対し、乾燥した空気の下降時には気温の上昇幅が大きい。そのため、日本付近は暑くなる。フェーン現象と同じメカニズムである。


 他方、中国大陸では日射によって地面付近が暖められ、軽くなった空気が上昇する。これにより上空の気温は周囲より高くなり、「層厚の関係」と呼ばれる原理によって気圧も高くなる。これが上空のチベット高気圧である。チベット高気圧は、太平洋高気圧よりさらに上空で日本付近へ張り出し、その下降気流が太平洋高気圧を上から押し下げ昇温効果をさらに強める。世間で言われる「二重の掛布団(かけぶとん)」の正体はこれである。


海面水温も熱くなる

 次に海面水温と気候の関係を見てみよう。まず「エルニーニョ」と「ラニーニャ」について考える。


 南米ペルー沖では、東寄りの貿易風によって海面付近の暖かい海水が西へと流される。これを補うため、海の深層から水温の低い海水が湧き出し(湧昇)、海面付近の空気が冷やされて、密度が大きく重い空気(高気圧)が生まれる。ここから西へと重い空気が押し出され、温かい海水域も西側(太平洋西部)へと移動していく。この温かい海水によって暖められた空気は、太平洋西部で上昇気流となり、巡り巡って日本付近の上空で下降気流となって太平洋高気圧となる。これが通常のメカニズムである。


 ところが、貿易風が弱く、冷たい湧昇流の勢いが弱まり、海面水温が普段より高い状態になる(エルニーニョ現象)と上昇気流の発生場所が東へ移動し、下降流のエリアも東へずれ、太平洋高気圧の日本への張り出しは弱まる。結果として、日本の夏は不順(冷夏傾向)となりやすい。


 逆に、貿易風が強くペルー沖の冷水湧昇が盛んなとき(ラニーニャ現象)は、上昇気流のエリアが西へ移動し、下降流域も西へずれ、太平洋高気圧の日本への張り出しは強まる。結果として、日本の夏の暑さは厳しくなりやすい。


エルニーニョでもなぜ猛暑?


 この教科書的説明だけなら、今年の夏は「エルニーニョ」が起きているので冷夏になってもおかしくない。しかし、近年の研究から考えたいのが、海面水温が西インド洋で高く東インド洋で低くなる「正のダイポールモード現象」である。


 東インド洋は水温が低いため海面付近の気温も低く、密度の大きい空気が東側のフィリピン付近まで西風となって押し出される。ここで太平洋高気圧の縁から吹く東からの貿易風とぶつかり、風が収束して逃げ場を失った空気が上昇。この空気が雨を降らせて乾燥した空気となり、日本付近までやってきて下降流となる。ハドレー循環と同じく、乾燥した空気の下降は気温の上昇幅が大きい。


 また、この現象は日本上空の偏西風を北へ蛇行させ、チベット高気圧が東へ張り出す原因となり猛暑をもたらす。「エルニーニョ現象」自体には猛暑を和らげる効果があるものの、地球温暖化によって平常時の海水温が底上げされているため、それだけでも冷夏になりにくくなっている。その上、この「正のダイポールモード現象」が重なり、さらなる猛暑が助長されると考えられている。


 年々暑くなる夏に適応し少しでも安全に楽しく過ごせるよう知恵を絞りたい。

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