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【暑熱対策特集】猛暑時代の酪農経営~乳用牛の暑熱対策は『夜』が勝負~①

2026年07月03日
     
図1 経産牛における日最小THI階層ごとの受胎率(%)
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 今夏も猛暑の予想が出ており、安定的な生乳の生産には乳用牛の暑熱対策の重要性が一層高まっている。そこで、乳用牛の繁殖低下防止対策について、北里大獣医学部の鍋西久氏に解説してもらった。


猛暑が「新しい常態」に 

熱帯夜続きでストレスが蓄積

 近年の

 今夏も猛暑の予想が出ており、安定的な生乳の生産には乳用牛の暑熱対策の重要性が一層高まっている。そこで、乳用牛の繁殖低下防止対策について、北里大獣医学部の鍋西久氏に解説してもらった。


猛暑が「新しい常態」に 

熱帯夜続きでストレスが蓄積

 近年の夏は、もはや「異常な暑さ」ではなく、新たな常態になりつつあります。2023年、24年は観測史上最も暑い夏となり、25年にはさらに記録が更新されました。これまで暑熱対策があまり必要とされてこなかった東北や北海道でも、猛暑日や熱帯夜が続くようになっています。

 乳牛は暑さに弱い動物です。特に近年は日中の気温上昇だけでなく、夜間の気温も高い状態が続いています。本来、乳牛は夜間に体温を下げることで日中の暑熱ストレスから回復しています。しかし、熱帯夜が続くと体温を十分に下げることができず、暑熱ストレスが翌日まで持ち越されてしまいます。このような環境変化は、乳量や繁殖成績の低下を引き起こす大きな要因となっています。

 私たちは雪印メグミルク㈱酪農総合研究所と共同で、北海道から沖縄まで約40戸の酪農家に協力いただき、牛舎内環境と乳用牛の生産性との関係について調査を行ってきました。牛舎内に温湿度センサーを設置し、温度、湿度、THI(温湿度指数)を1時間ごとに測定するとともに、繁殖成績や牛群検定成績との関連を解析しています。


夜間環境が繁殖成績を左右する 

暑熱負荷は長期間繁殖に影響

 解析の結果、繁殖成績に最も大きく影響していたのは、日中の最高THIではなく「日最小THI」でした。日最小THIとは、一日のうちで最も低いTHIのことで、主に夜間から早朝の牛舎環境を反映しています。約2万件の交配データを解析したところ、人工授精(AI)の受胎率は日最小THIの上昇とともに段階的に低下しました。特に日最小THIが75以上になると受胎率は20%を下回り、5頭に1頭も受胎しない状況でした(図1)

 一方、受精卵移植(ET)の受胎率は高温条件下でも比較的安定しており、暑熱期における有効な繁殖戦略であることが確認されました。高泌乳牛群においても、暑熱時には「夏こそET」という考え方が繁殖成績改善につながる可能性があります。

 また、ホルスタイン種の性選別精液では、暑熱時の受胎率低下が特に顕著でした。今後さらなる検証が必要ですが、暑熱期には使用する精液についても慎重な検討が必要と考えられます。

 さらに興味深いことに、人工授精受胎率は気温が高い6~9月だけでなく、10~12月においても低下が続いていました。これは暑熱ストレスの「持ち越し効果(キャリーオーバーエフェクト)」と呼ばれる現象です。夏場に受けた暑熱ストレスの影響が卵子や子宮環境に残り、秋以降の繁殖成績にも影響を及ぼしていると考えられます。


②へ続く



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