春夏野菜主要病害虫防除のポイント①(病害編)





昨年は夏季の平均気温が平年を2度以上上回り、観測史上、最も暑い夏となった。また、年間を通じても高温傾向の年が続き、冬季から春季の高温ではいろいろな病害が前年の秋季から持ち越され、春季の早期からの発生が懸念される。酷暑の夏季には、特に昨年の
昨年は夏季の平均気温が平年を2度以上上回り、観測史上、最も暑い夏となった。また、年間を通じても高温傾向の年が続き、冬季から春季の高温ではいろいろな病害が前年の秋季から持ち越され、春季の早期からの発生が懸念される。酷暑の夏季には、特に昨年のような少雨では病害の発生は低減されるが、近年、増加している集中豪雨によって極端な高温多湿がもたらされると、突発的に病害が発生し、蔓延(まんえん)する可能性がある。ここでは、春夏野菜に発生しやすい病害の対策について解説する。
農研機構 植物防疫研究部門 作物病害虫防除研究領域 生物的病害虫防除グループ長 窪田昌春
発病初期見逃さず農薬散布
過湿避ける工夫で感染防ぐ
春季の早期には各種作物のべと病、灰色かび病が心配される。より気温が高くなると、各作物のうどんこ病、トマト葉かび病など、さらに夏季に近づくとキュウリ褐斑病、ナスとピーマンの黒枯病、トマトとナスのすすかび病などが従来よりも早期に発生する可能性がある。これらの病原菌は作物の罹病(りびょう)部に多量の胞子を形成して、それが風媒されることで蔓延する。そのため、大量の胞子形成が始まる発病初期を見逃さずに、農薬散布による防除を開始したい。
胞子を多量に形成するこれらの糸状菌病原菌では、農薬の耐性菌が発生しやすいため、作用機作が異なる農薬をローテーション散布しなければならない。作用機作は、農薬の容器ラベルにFRACコードとして記されている。FRACコードがMと数字の組み合わせからなる多作用点接触活性阻害剤には耐性菌が発生しにくいため、防除の基幹とする。
また、各作物の灰色かび病、うどんこ病とトマト葉かび病では、バチルス細菌を成分とした微生物農薬や、炭酸水素塩類が予防剤として利用できる。うどんこ病には、殺虫剤として開発されてきた気門封鎖剤も使用できる。この炭酸水素塩、微生物農薬、気門封鎖剤はいずれも耐性菌が発生せず、有機栽培にも対応し、使用回数制限もない。
これらを含めた多くの病原菌では、作物に感染する際に多湿条件が必要であるため、暖房機と窓開閉の調整、循環扇や換気扇の利用によって、作物の周囲の過湿を避ける工夫が有効である。また、これらの病原菌の胞子は、施設の内面や、使用した資材に付着して生存し、次作の感染源となることが示されており、夏季に閑作となるならば施設の蒸し込みを行い、塩素系等の消毒剤で資材を洗浄するなど、圃場衛生にも注意を払う。
ウリ科作物の退緑黄化病、各作物の黄化壊疽病などのウイルス病も蔓延しやすい。病徴も春先の早くから現れるようになる。ウイルスに感染した作物株は回復することはないため、感染源を減らすために抜きとり、媒介虫が接触できないよう、即時にマルチ被覆、埋設、焼却などの処理を行う。
上記の糸状菌病害でも、胞子の飛散を防ぐために、剪定した罹病残渣(ざんさ)は同様に処理する。
昆虫媒介性のウイルス病を防ぐには、コナジラミ類、アザミウマ類などの媒介虫を徹底防除する必要がある。
多雨時に病害感染拡大盛ん
予測システムで効率的防除
多雨時には、葉菜類などの細菌病原菌による軟腐病、斑点細菌病、アブラナ作物の黒腐病なども発生しやすい。これらの細菌病原菌は、土壌から跳ね上がって茎葉に感染する。特に、風を伴う降雨では作物に傷がつきやすく、より感染しやすくなる。降雨前に銅剤などの散布によって予防する。土壌からの病原菌の跳ね上がりは、圃場のマルチ被覆によって低減できる。
水はけ改善が病害防ぐカギ
作付け前の土壌消毒が有効
春季以降に播種、定植する作物では、高温傾向によって、苗立枯も含めた、いろいろな土壌病害が発生しやすくなっている。夏季の地温が高い時期に、豪雨や長雨によって土壌水分が多くなると、生育が進んだ苗においても、各作物の白絹病や、リゾクトニア菌による立枯や株腐病が多発して急速に進展する。
いずれの土壌病害も土壌の過湿によって発生するため、土壌改良や高畝などで作物根圏の水はけをよくする。前作などで土壌病害の発生が多かった圃場では、作付け前に土壌消毒を行うことが望ましい。土壌消毒では燻蒸(くんじょう)剤を用いてきたが、それらを用いない還元消毒も有効である。還元消毒では、有機物を土壌にすき込んで潅水し、マルチ被覆によって地温を30度以上に1週間程度保つことで行える。有機物としてはもみ殻やふすま、食品工場廃棄物などが用いられていたが、廃糖蜜資材、糖含有珪藻土、低濃度エタノールの有機物をより土壌の深いところまで浸透させられる資材が開発されている。








